なぜでしょう、SM秘小説の原稿には比較的看護士の設定が多いような気がします。
多分、僕が好きだったからではないでしょうか?
高円寺にあった杉浦則夫氏のマンションスタジオで撮影されています。日本芸能美術でレンタルした小道具を配置するとスタジオは足の踏み場もないほど乱雑になりました。絵にもその乱雑さは現れています。きっと借りたもので秩序だった診察室を組むには少々物品が足りなかったせいでしょう。有りものの小道具を加えて廃墟風に仕立てています。
当時スタジオに入ると編集であった僕はまずモデルの剃毛を行いました。SMクラブではオプションで追加料金を取られる剃毛を、撮影の度に行えたのは贅沢の極みだったかもしれません。ただし剃毛は細心の注意を払わないといけません。
剃り残しはまるで無精髭のように目立ちます。かといって剃りすぎると、ニキビのような赤い点が残り股間は無惨になります。また割れ目付近は皮膚も柔らかく気をつけないと切り傷をこしらえますし、肛門周辺は皺が邪魔して剃るのに苦労しました。
当初はシェービングフォームを使っていましたが、これにはメンソール成分が入っているものが多く、これを割れ目に刷り込むとひどい痛みを訴えてしまうので、シェービングフォームの銘柄チョイスには充分気をつけないといけませんでした。
初対面のモデルに下半身裸になって脚を広げて床に寝るように命じ、両足の間に湯を満たした洗面器とタオル、シェービングフォームにカミソリを持って座り込みます。そして秘部に泡を刷り込み、皮膚を引っ張ったり伸ばしたりしながら丹念に剃ります。この作業、案外好きでした(笑)
新人モデルだと、まるで婦人科のような姿勢に、両手で赤らめた顔を隠しています。彼氏がいるモデルだと、彼氏にモデル業がばれないように毛は残して欲しがります。そこで駆け引きが行われます。彼氏へのいい訳をアドバイスしたり、ここまでは絶対剃らせて欲しいと交渉するのです。
真面目に剃っている振りをしながらも、さりげなくクリを刺激したりするとじんわり濡れて来ますし、身体がヒクヒクと反応する様を観察するのは編集冥利に尽きました。個人的な愉しみと言われたらそうかもしれませんが、ここで身体に火をつけておくのはその後の撮影には有用であったとも云えます。
常日頃から、股間の隠しに役立つものはないかと探していましたが、この撮影で登用されているのがリング状のイヤリングです。割れ目に施されたピアスに見立てて、ゴム管を固定し割れ目を隠すのに一役買っています。さらに杉浦氏が考案した和紙による隠しが施されています。この和紙も繊維の毛足が長いものでないといけなく、比較的高い和紙を用いないと崩れてしまいます。
撮影中の編集の役割分担はこの秘部隠しです。巧妙で想像を掻立てる隠し方ができればよいのですが、この工夫には苦労したものです。