文芸春秋社刊「生きかた下手」表紙本日5月6日、団鬼六先生が永眠なされました。享年79歳。心よりご冥福をお祈りします。
団先生は、SM小説に市民権を与えた立役者でありました。SM雑誌に於いては、巻頭に先生の連載なくしては、売れ行きもおぼつかないほどの人気を誇ったものです。
直接の親交はありませんでしたが、団先生の桜木町のご自宅に原稿取りでお伺いしたことがあります。清楚な和風の母屋で、二階で執筆なされる間、一階の客室に泊まり込み、原稿の仕上がるのを待たせていただきました。
客室の床の間に日本刀が飾られており、先生の許可を頂いて鞘から抜刀させていただきました。初めて手にする日本刀でした。明かりに照らし出される抜き身は、ゾクリとするほど妖しい光を宿しずしりと重く、思わず魅了されたものです。
時折、先生の執筆の様子をのぞかせていただきながら待っていましたが、睡魔に勝てず眠ってしまいました。明け方近く、襖を開ける音に飛び起きると、先生がニッコリと微笑みながら原稿を差し出してくださいました。
「すまんね、こんなに時間がかかってしまって」
うたた寝しながら待っていた僕より、夜を徹して執筆なさった先生の方がお疲れのはずなのに、微塵にも出さず相手を気遣うのが先生でした。
永きに渡りSM界を牽引なさった巨匠団鬼六先生、お疲れさまでした。
どうぞ安らかにお休みください。