ゴディバ(GODIVA)といえば、高級チョコレートであまりにも有名なベルギーの会社ですが、
そのロゴの由来に非常に興味深い逸話があります。
このロゴのモチーフとなったのは十一世紀イギリスのゴディバ夫人です。
コヴェントリーの町の領主マーシア伯レオフリックの夫人であった彼女は、重税に苦しむ町民のために、幾度も夫に減税を嘆願しました。
しかし伯爵はきつく叱りつけ、その願いに首を縦に振ることはありませんでした。
それでも祈願する粘り強い夫人に対し、
「馬にまたがり、民衆の前で、素裸で乗りまわせ。町の市場をよぎり、端から端まで行くことができたならば、お前の要求はかなえてやろう」
と答えたのでした。
町民思いの伯爵夫人は、全裸になると髪を解き、長い髪で胸元を隠し馬にまたがりました。
役人から話を聞いた町民たちはある誓いを立てました。
ゴディバ夫人に背を向け、決してその姿を見ない、という誓いでした。
二人の騎士を供に、伯爵夫人は街の端から端まで、背を向ける町民たちの間を駆け抜けて行きました。
そして伯爵のまえに嬉々と舞い戻り、約束を果たしたことを伝えると、伯爵は苦りきった顔で減税を承諾したのでした。
ジョン・コリア作「ゴディバ夫人」この逸話には、もうひとつの逸話が絡んでいます。
町民思いの伯爵夫人の気持ちに応えるべく町民たちは背を向けていたのですが、たった一人だけ素裸で馬に股がる夫人の姿を覗き見した男がいました。
仕立て屋のトムです。
覗き見が発覚したトムは町民たちによって両目を抉られてしまいました。(命で償った説も)
この覗き見男から「ピーピング・トム」という俗語が誕生したのでした。
諸説ある言い伝えでは、町民は家に閉じこもり窓を閉じ、決して夫人の姿を見なかったともありますし、
夫人は全裸ではなく、薄手の白い衣装を纏っていたという説もあります。
減税のためではなく贖罪のためという説も……。
しかしやはり、羞恥に身を染めながら髪の毛で胸元を隠し町民の間を走り抜けたというのが我々の願う真実でしょう。
一粒食べたくなりました。
この逸話を思い口にすれば、より美味な味わいがすると思います。